2026年7月の活動報告について

いつも、浦野ようたろうオフィシャルサイトを閲覧いただき、ありがとうございます。

7月は、

  • 会派で北海道行政視察(3日間)
  • 文教福祉常任委員会行政視察(2日間)
  • 全国若手議員の会(2日間)

を取り組んで参りました。

時系列順にお伝えします。

会派行政視察(北海道)

北海道視察20260706①

「視察日程」:令和8年7月6日(月)・7日(火)・8日(水)

「視察先」 :6日 北海道江別市、7日 北海道旭川市、8日 北海道滝川市

はじめに

所属する会派「真政会」において、北海道江別市、旭川市、滝川市で4つの施設の行政視察を実施いたしました。

これらの施設は、いずれも地域の個性と課題に対応した先進的な取り組みを展開しており、福島市における公共施設の整備・運営方針および地域活性化戦略の構築に極めて参考になるものでありました。

①.江別市都市と農村の交流センター「えみくる」

施設の概要

施設名称: 江別市都市と農村の交流センター「えみくる」

所在地: 北海道江別市美原1445番地

開館時間: 午前9時~午後9時

休館日: 毎週水曜日、12月29日~1月3日

電話番号: 011-384-0285

指定管理者: 特定非営利活動法人えべつ江北まちづくり会

施設の設置背景と運営目的

北海道視察20260706②

「えみくる」は、農村地域の農家と都市部に住む市民との交流促進、および農村地域の持つ潜在力の発信を目的に整備された公共施設です。

その名称である「えみくる」は、「江別に、身近に、くる」という造語であり、地域への親しみやすさと利便性を象徴しています。

都市と農村の距離を縮め、食と農業を通じた多様な交流活動を展開することで、江別市の農業振興ならびに関係人口の創出を図る重要な拠点として機能しています。

施設の構成と主要事業

調理実習室とテストキッチンが完備されており、地元農家および事業者による農産物の加工実習が行われています。

体育館、野球場、多目的グラウンドが整備されるとともに、屋内外のピザ窯やバーベキュー設備も備えられており、多角的な利用が可能です。

「えみくる」における最も特徴的な事業が食育活動です。

地元食材を活用した各種料理教室が定期的に開催されており、パン教室、漬物講習会、フルーツカッティング体験、スパイスを活用した調理実習など、多様なテーマの講座が市民向けに提供されています。

これらの教室は単なる調理技術の習得にとどまらず、地元農産物への理解と関心を深める重要な役割を果たしています。

2.旭川市ICTパーク

旭川市ICTパーク

施設の概要

施設名称: ICTパーク

所在地: 北海道旭川市3条通8丁目842-2(神田館内)

開設年月: 令和3年(2021年)2月7日

管理・運営: 一般社団法人大雪カムイミンタラDMO

電話番号: 0166-85-6232

施設の設置背景と課題認識

ICTパークは、中心市街地の賑わいをDX(デジタルトランスフォーメーション)で「再生」させることを目的に設立されました。

旭川市の中心市街地は、郊外への大型商業店舗の出店や相次ぐデパート閉店により、歩行者数が減少していました。

少子高齢化が進む中、従来とは異なる切り口での賑わい創出を模索した結果、「eスポーツ」に着目しました。

海外での大きな盛り上がり、国内認知度の上昇、デジタル産業のすそ野拡大の可能性、そして寒冷地における屋内交流の価値が決め手となりました。

主要施設とその機能

コクゲキ(劇場型eスポーツスタジアム)

北海道最大級の規模を誇り、約180名を収容可能です。

建物は2004年に閉館した映画館「旭川国民劇場」を再生したもので、最新のICT設備を導入しています。

ローカル5G、高性能な大型LEDビジョン(約5m×3m)、高性能ゲーミングPC10台、リアルタイム配信可能な映像設備、音響・照明設備などを備えており、eスポーツ大会の開催が可能です。

VRを活用した地域魅力発信映像の体験コーナーも設置されています。

トレーニングジム

eスポーツのスキルアップに必要な環境を整備しており、高性能ゲーミングPC10台、キーボード、ヘッドセットなどが完備されています。

18歳以下は無料で利用でき、ICT企業や教育機関と連携したプログラミング教室を開催し、学校や世代を超えたコミュニケーションスペースとして機能しています。

スマートイノベーションラボ 北海道 旭川ルーム

NTT東日本が設置する施設で、AI開発に必要な高性能GPU(画像処理装置)の利用が可能です。

ICT関連企業の誘致につながるケースが出ており、定期的なプログラミング教室開催を通じて、ICTに強い人材育成の拠点となっています。

eコミュニケーションスペースおよびWorcu-pet(ワークーペ)

フリーWi-Fiを完備したeコミュニケーションスペースのほか、テレワーク施設Worcu-petが併設されており、幅広い層が立ち寄り、交流できるようになっています。

運営体制と推進方針

ICTパークの運営にあたっては、旭川市、旭川工業高等専門学校、旭川商工会議所、観光・情報産業の団体、地元新聞社などが「ICTパーク推進協議会」を設立し、協力体制を構築しています。

DMOが協議会から委託を受ける形で施設運営を行っており、旭川市は「旭川市デジタル化推進方針」において、地域課題解決の方策としてICTパークを位置付けています。

特筆すべきは、旭川高専の学生がボトムアップでアイデアを発案し、プログラミングなどを教える教室を開催していることです。

仮想空間創造ソフトの体験や3Dプリンターでの具現化など、世代を超えた交流が生まれています。

成果と波及効果

北海道行政視察20260707②

開設から2023年度まででeスポーツ関連事業の実施回数は計40事業に上り、参加者は延べ5,600人以上に達しています。

プログラミング体験事業では2023年度は初年度比で事業回数、参加者ともに2倍に増加し、トレーニングジムの利用者は初年度の3倍以上の2,030人となっています。

2024年には夜間の賑わい創出を目指したイベントが全10回開催され、計544人が参加しました。

最近では外部からイベント企画が持ち込まれることも増え、東京都や大分県の高校が教育旅行で見学に訪れるなど、波及効果が拡大しています。

特筆すべき知見

市は「ICTパークはある種の『箱』であり、お金をかけて作っただけではほぼ意味をなさない。

重要なのは、いかに活用していくか」という見解を示しています。

学生を含めたすべてのステークホルダーがボトムアップでアイデアを出し合い、効果的な活用を探る仕組みの構築が推進のカギとなっています。

また、現在は国の補助金や市の予算を投じていますが、将来的には独立採算で自走させることを目指しており、公共性と収益事業のバランスを取ることが課題となっています。

3.旭川市科学館サイパル

北海道行政視察20260707③

施設の概要

施設名称: 旭川市科学館サイパル

所在地: 北海道旭川市宮前1条3丁目3番32号

開館時間: 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

入館料: 一般1,040円、中高生660円、高齢者1,560円(65歳以上含む団体等)

電話番号: 0166-31-3186

施設の性格と役割

旭川市科学館サイパルは、子どもから大人まで、楽しみながら科学を学び体験できる施設として設計されています。

科学館の名称「サイパル」は、サイエンスの「サイ」と北海道の先住民族アイヌに関わる言葉「パル(仲間)」を合わせた造語で、科学の仲間になろうという意味が込められています。

常設展示室の構成

旭川市科学館

常設展示室は「北国」「地球」「宇宙」の3つのコーナーに分かれています。

北国コーナーでは、北国の自然現象の不思議をテーマに、雪の結晶や極限環境での生命について学べます。

地球コーナーでは、地球規模のエネルギーや物質の循環、気象現象について体験的に理解できます。

宇宙コーナーでは、宇宙の広大さと人類の宇宙進出について学ぶことができます。

特別展示と体験プログラム

開館時間中、低温実験室での体験プログラムが実施されており、極低温環境での物質変化を直接体験することができます。

また、プラネタリウムは旭川市科学館の重要な施設として位置付けられており、専門の解説員による解説がなされています。

教育交流機能

旭川市科学館サイパルは、学校教育との連携を重視しており、児童生徒向けの各種教育プログラムが企画・実施されています。

また、市民向けの各種講座やワークショップも開催されており、生涯学習機能を果たしています。

4.滝川市立図書館

滝川市立図書館

施設の概要

施設名称: 滝川市立図書館

所在地: 北海道滝川市役所2階

開館時間: 午前10時~午後6時

休館日: 毎週月曜日、祝日、年末年始

開館年: 1973年(2011年11月に市役所庁舎2階に移転)

電話番号: 0166-23-0562

施設の独特な特性

滝川市立図書館は、全国的にも珍しく、11階建ての市役所庁舎の2階に入居する図書館です。

1973年に開館してから約50年の歴史を持ち、2011年11月に市役所庁舎への移転を機に、新たな運営方針を打ち出しました。

館内はワンフロアで、開架冊数は約6万冊です。

運営方針の特徴:「本屋さん方式」の採用

最も特徴的な運営方針は、一般的な図書館の「日本十進分類法」による分類ではなく、「本屋さん方式」を採用していることです。

本の並べ方を「いのちの森」「くらしの森」など、内容ごとに森に例えて分類し、利用者がより直感的に、探しやすく、手に取りやすい環境を実現しています。

施設のコンセプト:利用者本位の設計

児童書コーナーの「えほんの森」では、絵を描いた人の名前の五十音順に絵本が並べられており、昔話や行事、キャラクター絵本などのコーナーも備えられています。

「おはなしのひろば」は、赤ちゃん向けの絵本や紙芝居を備えた畳敷きの部屋で、赤ちゃんをごろんと寝かせた状態で本を選べるようになっており、図書館のおはなし会もこのスペースで開催されています。

郷土資料室には、市勢資料および郷土資料が整備されており、「たきリブ通帳」という独創的なサービスも提供されています。

これは、借りた本の記録を通帳に記載するシステムで、利用者に読書の履歴を可視化する工夫がなされています。

図書館の多機能化

図書館が市役所庁舎内に入居していることを活かし、市役所各課で配布しているチラシやパンフレットを置いた行政情報コーナーが設置されています。

また、國學院大學北海道短期大学部との連携コーナーもあり、地域の高等教育機関との連携の場となっています。

インターネットコーナーには3台のパソコンが設置され、調べもの専用として利用できます。

学習室には18席が設置されており、どなたでも自由に利用できます。

図書除菌機が導入されており、衛生面への配慮も行われています。

多機能トイレ、こども用トイレ、授乳室、水飲み場など、来館者の多様なニーズに対応した施設が整備されています。

地域との連携と情報発信

ライブラリアンシップ賞受賞

滝川市立図書館は、「丁寧な連携事業と細やかな情報発信」を基本コンセプトとしており、市内の大学や地域団体との協働を重視しています。

また、「調べる学習コンクール」など、市民の探究学習を支援する事業も開催されており、単なる貸出業務にとどまらない、地域的な学習支援機能を果たしています。

【視察から得られた統合的な知見】

公共施設運営における基本的考え方の転換

今回の視察を通じて明らかになったのは、公共施設の本来の価値は「施設そのもの」ではなく、「継続的に地域活動が生まれ、利用される仕組み」にあるということです。

えみくるのスタッフの言葉を借りれば、「行政が場を整えるだけでなく、地域団体や住民の活動が継続的に生まれるような仕組みづくりが意識されており、公共施設の在り方として参考になるものであった」と言えます。

この視点は、ICTパーク、科学館サイパル、滝川市立図書館のいずれでも貫かれており、「いかに活用されるか」を最初から想定した、利用者本位の施設設計となっています。

既存資源の創意的な活用

旭川市ICTパークが、2004年に閉館した映画館「旭川国民劇場」を再生させて開設された点は極めて重要です。

新規建設ではなく、既存施設を地域課題解決の拠点へと転換させることで、資金効率性と地域愛着の両立を実現しています。

滝川市立図書館の市役所庁舎への入居も、一見すると制約的に見えるかもしれませんが、行政サービスとの連携を深め、市民にとっての総合的な情報提供窓口となることで、図書館機能の多面的な拡張を実現しています。

指定管理者制度と地域NPOの活用

えみくるの指定管理者である「特定非営利活動法人えべつ江北まちづくり会」は、地域に根ざした組織です。

行政が施設を整備しても、その運営を地域の実情に精通した組織に委ねることで、より創意工夫に富んだ、利用者本位の運営が可能となります。

ICTパークでは、DMOが中心となって産官学を結びつけるコーディネート機能を果たしており、旭川高専の学生のボトムアップ的なアイデア発案が促進される体制が構築されています。

農業・学習・交流の総合的活用

えみくるが示した「農業を『交流』『学習』『地域づくり』の総合的な資源として再評価する視点」は、単なる農業振興策を超えた、地域全体の活性化戦略です。

地元農産物を活用した体験型プログラムは、都市住民と農村住民を結ぶ橋渡しとなり、相互理解の深化と関係人口の創出につながっています。

デジタル技術を活用した地域課題解決

ICTパークの事例は、デジタル技術(eスポーツ、ローカル5G、AI、プログラミング教育)が、単なる技術導入ではなく、中心市街地の賑わい創出、人材育成、企業誘致といった複合的な地域課題解決に活用される可能性を示しています。

特に、寒冷地における屋内交流の価値という地域特性を踏まえた活用方法は、福島市にとっても参考になるものです。

利用者層の多様性への対応

滝川市立図書館の「本屋さん方式」による分類、赤ちゃん向けの畳敷きスペース、高齢者向けの大きな文字の本の配置など、子どもから高齢者まで、多様な利用者層のニーズに対応した設計がなされています。

これは、公共施設が地域全体のインクルーシブな学習・交流の場として機能するべきであることを示唆しています。

おわりに

北海道行政視察20260708①

今回の視察を通じて、単なる「施設」としてではなく、「継続的に地域活動が生まれる仕組み」としての公共施設の在り方、農業・学習・交流の総合的な活用方法、地域資源を生かした地方創生戦略について、極めて実践的かつ有益な学習を得ることができました。

特に、えみくる、ICTパーク、科学館サイパル、滝川市立図書館を運営する関係者の、利用者本位かつ創意工夫に富んだ姿勢は、福島市が今後、地域活性化策を推進する際における重要な指標となるものです。

福島市議会文教福祉常任委員会行政視察

文教福祉常任委員会行政視察①

視察期間:令和8年7月23日(木)・24日(金)

視察先及び調査事項:

7月23日(木)埼玉県越谷市「越谷市自殺対策推進条例について」

7月24日(金)東京都日野市「日野市自殺総合対策推進条例について」

はじめに

福島市議会文教福祉常任委員会は、福島市における自殺対策をより実効的に推進するため全国的な自殺対策の先進事例を学ぶため、埼玉県越谷市および東京都日野市を視察いたしました。

本視察は、当委員会における議員提案による「福島市自殺対策推進条例」(仮称)の制定を視野に入れた調査活動です。

視察の背景と意義

文教福祉常任委員会行政視察②

福島市では、平成31年3月に「第1次福島市自殺対策計画」を策定し、市を挙げて自殺対策を推進してきました。

しかし、本市の自殺死亡率は令和4年に16.46と高い水準を保っており、特にハイリスク層である高齢者、生活困窮者、勤務者における自殺が深刻な課題となっています。

現在、本市は新たに「第2次福島市自殺対策計画」(令和6年度~令和10年度)を推進していますが、こうした行政計画の実効性を高め、市全体での総合的な自殺対策を推進するためには、条例という法的基盤の構築が極めて重要です。

本視察で調査した越谷市および日野市の条例は、市民、事業者、教育機関、医療機関等が相互に連携する体制を制度化した先進的な事例であり、福島市における条例制定の参考となるべき内容です。

越谷市の取り組み:越谷市自殺対策推進条例

越谷市へ

条例制定の背景と位置づけ

越谷市は平成30年6月に「誰も自殺に追い込まれることのない越谷の実現」を理念として、自殺対策推進条例を制定し、同年10月から施行しました。

本条例は、自殺を個人的な問題としてのみではなく、その背景にある様々な社会的要因を踏まえた包括的な施策として位置づけています。

条例の主要な特徴

春日部

条例は基本理念として、自殺対策を「生きることの包括的な支援」として推進することを定め、自殺は多様かつ複合的な原因および背景を有することを明記しています。

市、学校、事業者、市民、医療機関、福祉関係機関等が相互に密接に連携協力する体制を構築することで、自殺の予防、危機対応、事後対応という各段階に応じた効果的な施策の実施を定めています。

特に注目すべき点は、市長に対し以下の責務を課していることです。

市が実施する自殺対策について、市内の自殺問題に関する状況および情報を組織横断的に分析することを求めており、これにより行政全体での総合的なアプローチを実現しています。

また、「越谷市自殺対策連絡協議会」を市長の附属機関として設置し、関係機関の総合的かつ計画的な連携を推進する仕組みを整備しています。

さらに、毎年市議会に自殺対策の実施状況を報告することが義務付けられており、透明性と説明責任を確保する工夫が施されています。

加えて、子ども・若者、高齢者、労働問題など、対象層別の特化した対策の推進を条例に明記することで、きめ細かな施策展開を可能にしています。

日野市の取り組み:日野市自殺総合対策推進条例

日野市へようこそ

条例制定の背景と全国的位置づけ

日野市は平成23年4月に、全国で2番目(都内では初)となる自殺対策に関する条例を施行しました。

首長提案としては全国初となる先進的な取り組みです。

本条例は、市、市民、事業者、教育機関、地域が一体となって自殺対策に取り組むことを目的としており、自殺対策の基本理念と施策の方向性を明確に定めています。

条例の主要な特徴

日野市条例の特徴は、自殺対策を人権的側面から捉え、自殺者、自殺未遂者およびその周辺の人々の名誉、心情および生活の平穏に十分配慮することを定めている点です。

この規定は、自殺対策が単なる統計的な対象把握ではなく、個人の尊厳と人権を尊重する姿勢を制度化したものとして、極めて重要な視点です。

日野市では「自殺総合対策推進委員会」を設置し、基本計画に基づいた実効的な施策の推進状況を定期的に確認・検証する仕組みを構築しています。

これにより、計画立案から実施、評価、改善に至るPDCAサイクルを制度的に担保しており、施策の継続的改善を実現しています。

両市の条例に共通する重要な特徴と福島市への示唆

文教福祉常任委員会行政視察③


1.全庁横断的な推進体制の制度化

越谷市の「自殺対策推進本部会議」および日野市の「自殺総合対策推進委員会」に見られるように、自殺対策を一部の部局だけではなく、全庁横断的に推進する体制を条例で制度化することが共通しています。

福島市においても、健康福祉部を中心としながらも、教育委員会、産業部、人権推進課等の関連部局が統一的に機能する体制の構築が必須です。

2.市民、事業者、教育機関との連携体制の明確化

自殺対策の実効性を高めるためには、行政だけではなく、市民や関係団体との協働が不可欠です。越谷市および日野市の条例では、学校、事業者、市民の責務を明確に定めることで、社会全体での自殺対策への取り組みを制度化しています。

3.計画の策定と評価検証の仕組みの構築

越谷市では「市長は推進計画を策定し、又は変更しようとするときは、市民及び保健医療関係者の意見が反映されるよう、必要な措置を講ずる」と定め、市民参加の下での計画策定を制度化しています。また、毎年市議会に報告する義務を定めることで、説明責任と施策の改善を結びつけています。

4.対象層別・段階別の施策の充実

越谷市条例が「子ども・若者の自殺対策の推進」「高齢者の自殺対策の推進」「労働問題による自殺対策の推進」など、対象層別の施策を条例に明記している点は、福島市の対策にも反映すべき重要な視点です。福島市の自殺実態において、30歳代の男性(自殺死亡率38.25)および60歳以上の無職者(全体の4割弱)が高リスク層となっており、こうしたハイリスク層を対象とした特化した施策の推進が急務です。

福島市における条例制定への方向性

今回の視察を通じて得られた知見は、福島市における自殺対策推進条例の制定に向けた以下の方向性を示唆しています。

1.基本理念の明確化

福島市においても、「生きることの包括的な支援」として自殺対策を位置づけ、自殺を個人の問題としてではなく、社会的課題として捉える基本理念を条例に定める必要があります。これは、現在推進中の「第2次福島市自殺対策計画」における「気づく、傾聴、つなぐ、見守る」という柱と相互補完的に機能します。

2.推進体制の整備

「福島市自殺対策推進本部」(仮称)を条例により設置し、市長を本部長とした全庁横断的な推進体制を構築することが重要です。これにより、健康福祉部門のみならず、産業、教育、人権、高齢者福祉など、関連する全ての部局が統一的に機能する体制が実現します。

3.関係機関・団体との連携強化

学校、医療機関、事業者、市民団体、ゲートキーパー等、自殺対策に関わる全ての関係者の役割を条例に明記し、相互の連携体制を制度化することが必要です。

4.年次計画に基づくハイリスク層への対策強化

福島市のデータから明らかになっている高齢者、生活困窮者、勤務・経営者といったハイリスク層に対し、対象層別・段階別の施策を体系的に展開することを条例に明記する必要があります。

5.透明性と説明責任の確保

市長が定期的に市議会に自殺対策の実施状況を報告し、施策の効果検証と改善を制度化することで、市民への説明責任を確保し、同時に施策の実効性を高めます。

おわりに

今回の視察を通じて、自殺対策を実効的に推進するためには、市の自殺対策計画に加えて、これを支える法的基盤としての条例が不可欠であることが明確になりました。

越谷市および日野市の先進的な事例を参考に、福島市の自殺実態に即した実践的な条例の制定を目指すことは、本市の自殺対策をより高次の段階へ引き上げるものです。

文教福祉常任委員会は、本視察で得られた知見を最大限に活用し、福島市における自殺対策推進条例(仮称)の議員提案による制定に向けた具体的な検討を進めます。

条例制定により、市民一人ひとりがかけがえのない個人として尊重され、誰も自殺に追い込まれることのない福島市の実現に向けて、行政、市民、事業者、教育機関が一体となって推進できる環境を整備してまいります。

全国若手議員の会東北ブロック研修

若手議員の会東北ブロック研修

「研修日程」:令和8年7月28日(火)・29日(水)

「研修先」 :福島県須賀川市

「福島県須賀川市における先進施設整備と防災デジタル化に関する研修視察」

須賀川市における研修視察

視察概要

視察期間: 令和8年7月28日(火)~7月29日(水)

視察場所: 福島県須賀川市

視察対象施設・事業:

 1. 須賀川市民交流センター「tette」

 2. 消防団参集アプリ「S.A.F.E.」(セーフ)に関する取り組み

全国若手議員の会東北ブロックは、定期的に先進地域の視察研修を実施しています。

令和8年7月28日から29日、福島県須賀川市を訪問し、東日本大震災からの復興を象徴する複合交流施設「tette」ならびに消防団の次世代型デジタル化の先進事例である参集アプリ「S.A.F.E.」についての視察研修を実施いたしました。

●須賀川市民交流センター「tette」について

須賀川市民交流センター

施設の基本情報

施設名称: 須賀川市民交流センター「tette」(てって)

所在地: 福島県須賀川市中町4-1

開館年: 令和2年(2020年)12月

建築規模: 地上5階建て、延べ床面積約13,698平方メートル

竣工年: 平成30年(2018年)

施設の設立背景と復興事業としての意義

「tette」は、東日本大震災で甚大な被害を受けた須賀川市の中心市街地の再生と活性化を目的として、復興事業の一環として整備された複合公共施設です。

施設名の「tette」は、「須賀川に、『て』と『て』(手と手)をつなぐ」という造語であり、地域住民の相互交流と共生の理念を象徴しています。

東日本大震災からの復興は、単なるインフラの復旧にとどまらず、地域のコミュニティ機能の再構築と市民生活の質的向上が求められました。

「tette」は、図書館、生涯学習・市民活動施設、子育て支援施設、そして円谷英二ミュージアムといった複数の機能を統合することで、震災からの復興を象徴する「市民が交流し、学び、活動のできる拠点」として設計されました。

施設機能

「tette」は、単に複数の機能を同一建物に配置しただけではなく、それぞれの機能が有機的に融合する設計になっています。

・図書館機能(須賀川市中央図書館)

西側2階から4階にかけて占める図書館は、「偶然の出会い」をもたらす配架システムが特徴です。

従来の十進分類法による図書配置に加えて、施設全体にテーマ別に図書が配置されており、生涯学習ゾーンのキッチンルーム脇には料理本が、防音スタジオ脇には音楽本が、クラフトルーム脇には工作本が並んでいます。

さらに、最上階の円谷英二ミュージアムにおいても図書が配置されており、訪問者がロボット工学の本や怪獣の図鑑に出会える設計になっています。

本を探しながら館内を巡り歩くことで、多様な交流と学習の機会が生まれる仕組みが構築されています。

・生涯学習・市民活動施設

複数の多目的室、キッチンルーム、防音スタジオ、クラフトルーム、音楽スタジオなど、市民による様々な活動を支援する機能が充実しており、市民による自主的な学習活動と創造的な活動の場となっています。

・子育て支援施設

「わいわいパーク」などの子育て支援スペースが完備されており、保護者と子どもが安心して利用できる環境が整えられています。

授乳室も備えられており、乳幼児連れの来館者への配慮が行き届いています。

・円谷英二ミュージアム

須賀川市出身の世界的な特撮映画監督である円谷英二の業績を紹介する展示施設です。

歴史的な映像資料の保存と活用を通じて、地域の文化的遺産の継承と発信の役割を果たしています。

設計の特徴

「ずれながら積層する床」による融合

「tette」の最大の特徴は、複数の機能がしっかりとした境界を持つのではなく、「ずれながら積層する床」によって連結されていることです。

図書館、公民館、子育て支援施設といった従来は独立した機能が、スロープやゆるい勾配の階段によって物理的に連絡されており、訪問者が自然と異なる機能を行き来できる設計になっています。

視覚的な連続性と物理的な動線の確保により、図書館利用目的で訪れた市民が、他階のイベントに興味を持ち、予期しない交流が生まれる可能性が高まっています。

街路のような吹き抜け空間(「tette通り」)

敷地は元々2つに分かれ、南北に通じる細い道路がありました。

かつての小道のなごりを留めるために、東西南北に入り口が設けられ、建物中央を貫く吹き抜けの「tette通り」により、敷地のレベル差をそのまま床面に取り込んだ、ストリートが貫通しているような空間が実現されています。

サインも道路標識をモチーフにしたデザインで、「街にいる感じ」を高める工夫がなされています。

テラス空間による内外の連続性

2階以上のフロアに複数層のテラスが張り出され、一部は半屋外のサンルームとなっています。

テラス同士が外部階段で結ばれており、子どもの遊び場としても、学生の勉強場所としても活用されています。

テラスを設けた狙いは、人々の姿や声が外側に表れることで、「震災からの復興を果たし、街が元気になった様子を示す」ことにあります。

市民ワークショップと行政の横断的体制

「tette」の設計に先駆けて、市民の声を聞くための丁寧なワークショップが実施されました。

市民からは「施設を横断して利用したい」という要求が多く寄せられました。

例えば、子育て中の親が図書館で子ども向けの本を選んだ後、子育て支援施設で子どもを預けて、その間に所属する合唱グループの練習に参加するといった利用方法が実際に求められていました。

当初、図書館、公民館、文化振興課、こども課といった管轄する行政セクションが異なったため、施設づくりの足並みを揃えることが困難でした。

しかし、「融合」というコンセプトを市長が理解し、「交流センター準備室」という部局を設けて、一括して施設づくりにあたることになってからは、スムーズに進むようになったとのことです。

運営方針の転換

従来の施設名称である「図書館」「公民館」といった分類ではなく、複合する機能を「あそぶ」「まなぶ」「あつまる」「うごく・かなでる」といった動詞群を使って再編集しました。

この転換により、市民の視点から見た施設利用の行動パターンを中心に、施設機能が組織化されるようになりました。

消防団参集アプリ「S.A.F.E.」について

消防団参集アプリ

アプリの開発背景と社会的意義

S.A.F.E.(セーフ) は、消防団員により開発された、消防団専用の防災アシストアプリです。

開発の背景には、日本の消防体制における根本的な課題がありました。

従来、消防団の強みは、地域に密着した迅速な対応にありました。

しかし、時代の変化とともに、消防団員の昼間のサラリーマン化が進行し、災害発生時に出動できない、あるいは仕事中で災害通知に気づかないといった状況が増加しました。

こうした問題に対応するため、当時の消防団員たちが自らアプリを開発することになったのです。

開発の経緯

初期段階(2011年東日本大震災)

S.A.F.E.の開発動機は、2011年の東日本大震災にさかのぼります。

震災時、通信が混み合い電話が通じない、道路が損傷して通行不可能といった状況の中で、消防団は上からの指令が来ないまま、地元のパトロールを行わざるを得ない状況に直面しました。

その経験から、「情報共有できるシステムがあれば、もっと消防団として効果的に活動できたのではないか」という反省が生まれました。

開発と試行段階(2015年~2018年)

開発者であり、当時現役のシステムエンジニアでもある消防団員が、個人的に基本システムを構築し、自らの班で試験的に運用を開始しました。

一方、別の消防団員の体験から、「すべての関係者が火災発生の連絡を受けることが重要である」というモチベーションが加わり、アプリの開発が本格化しました。

2015年4月より、国際情報工科自動車大学校との共同開発の構想が始まり、産学協同の取り組みとして進められました。

運用開始と受賞(2018年以降)

2018年7月に須賀川市で運用が開始され、2018年8月に須賀川地方広域消防組合でも運用が始まりました。

その後、この革新的な取り組みに対して、総務省の「ICT地域活性化大賞2020」で大賞を受賞するなど、全国的な注目を集めるようになりました。

アプリの主要機能

火災発生通知と情報共有

消防本部からの火災発生メールが、S.A.F.E.の専用メールアドレスに送信されると、その内容が自動的に解析され、登録されているすべての消防団員のスマートフォンに一斉に通知が配信されます。

これにより、従来のように団長、副団長、分団長といった階層を経由する情報伝達が不要になり、初動対応が飛躍的に早まります。
須賀川市消防団の場合、導入前はメール送受信に数分要していましたが、導入後は数秒での一斉通知が可能になりました。

その結果、消防署より早く現場に到着し、ホースを延ばして放水の準備が完了していることもあるほどの改善が実現しています。

水利情報の一元管理

S.A.F.E.の最大の特徴は、地図上に消火栓、防火水槽、川、池など、すべての水利(消火活動に必要な取水地点)の位置情報が表示される機能です。

従来、火災発生時には、地元の団員は消火栓の点検を日常的に行っているため位置を知っていますが、地元以外から応援に来た団員は、現場で住民に大声で「この辺に消火栓はありますか」と聞いて確認していました。

アプリ導入後は、最寄りの消火栓が既に他の班で使用されている場合、別の消火栓の位置を即座に判断でき、消防活動の効率が大幅に向上します。

須賀川市には1,331個の消火栓がありますが、すべての位置情報が登録されており、消防団員はいつでもどこでも即座に確認できるようになっています。

点検記録の一元化と可視化

消防団員が消火栓等の点検を行った際、アプリ上で点検結果を入力することで、その記録が全団員に共有されます。

同時に、使用不可の消火栓も明確に把握できるようになっており、どのエリアの点検が進んでいるかも一目瞭然です。

この機能により、消防団の日常的な維持管理業務が効率化されるとともに、点検の公平性と透明性が確保されます。

出動状況の可視化とGPS追跡

火災発生通知を受けた団員が、出動先を選択(屯所に向かう、火災現場に直行するなど)し、到着予定時刻を入力すると、その情報が全団員に共有されます。

これにより、どの団員がどの出動先に向かい、いつ到着予定かが全員で把握でき、現場での役割分担が効率的に行われます。

また、GPS機能により消防団車両の位置もリアルタイムで追跡でき、現場指揮がより的確になります。

使いやすさの追求

S.A.F.E.の大きな特徴は、開発者自身が現役の消防団員であることです。

これにより、実際の利用現場と開発者の距離がゼロであり、本当に必要な機能と使いやすさが徹底的に追求されています。

点検報告の場合、点検した消火栓のボタンを押して、「異常なし」「異常あり」のボタンを押すだけです。

異常ありの場合は自動的に事務局に報告されます。

出動時も、屯所行き、現場直行、何分後に出発といった選択肢をタップするだけで、最少3、4回のボタン操作で完了する設計になっています。

高齢の団員でも操作できることを想定し、シンプルで直感的なUI(ユーザーインターフェース)が実装されています。

導入効果と運用成果

初動対応の高速化

S.A.F.E.導入前後で、火災情報の伝達方法は劇的に変わりました。

導入前は電話、メール、LINEなど様々な手段を通じて、段階的に情報が伝わっていました。

導入後は、消防署からの火災発生メールが、自動的にアプリ経由で全団員に一斉配信されます。

その結果、消防署が現場に到着する前に消防団が現場に到着し、初期消火の準備を整えられるケースが増加しました。

参集率の向上

アプリの導入率は現在90%に達しており、ほぼすべての団員が利用しています。

フィーチャーフォン(ガラケー)を使用している団員については、班内での電話やメール伝達で対応していますが、アプリ利用者の対応速度は圧倒的に早いことが確認されています。

女性団員の活躍促進

須賀川市消防団には女性班があり、13名の女性団員が活動しています。

そのうち9名は普通救命の指導資格を持っており、アプリの簡単操作により、女性団員の効果的な活動支援が可能になっています。

須賀川市における消防団の組織体制

常備消防と非常備消防の役割分担

須賀川市を含む1市4町3村のエリアをカバーする須賀川地方広域消防組合には、205名の常備消防職員が勤務しており、常に災害対応体制を整えています。

一方、須賀川市の非常備消防である消防団は、828名の団員(令和6年9月1日現在)で構成されています。

団員は18歳以上であれば上限年齢がなく、サラリーマンが多いため、一度退団した方も「機能別消防団員」として、日中の消防活動をサポートする役割を担っています。

機能別消防団員は37名で、サラリーマン団員の昼間不在をカバーする重要な役割を果たしています。

報酬体制

消防団員は非常勤の公務員として扱われ、団員報酬として年間36,500円が支払われます。

これは、日常からの消火栓点検作業や、災害発生時にいつでも参集できる体制を整えておくための報酬です。

さらに、火災現場への出動時には出動報酬が支払われ、活動時間や活動内容により、1日あたり最大8,000円となります。

地域コミュニティとしての消防団

視察を通じて認識された、須賀川市消防団の特徴は、単なる防災組織ではなく、地域コミュニティ機能を果たしているという点です。

開発者の一人は、「30歳前に地元に戻らないと地域に溶け込めないと思い帰郷した際、消防団に誘われた。感じたのは、消防団はただの防災組織ではなく、地域のコミュニティだということだ。同世代でコミュニケーションを取ることができ、若者にとって貴重なコミュニティでもある。実家に帰っても、近所のお年寄りがどなたかわからない状態だったが、消防団に入るとそういう方々ともコミュニケーションが取れるので、すんなり地元に馴染めるようになった」と述べています。

こうした地域密着の特性を生かしながら、デジタル技術により消防団の組織効率を向上させるというアプローチが、S.A.F.E.の成功の背景にあります。

研修から得られた統合的知見

公共施設設計における「融合」の重要性

「tette」の事例は、公共施設の設計において、異なる機能を単に同一建物に配置するのではなく、有機的に「融合」させることの重要性を示唆しています。

物理的な動線の確保、視覚的連続性、そして設計段階での丁寧な市民ワークショップにより、市民が自然と施設を横断して利用し、予期しない交流と学習の機会が生まれる設計が実現されました。

これは、福島県内の地方都市が今後、限られた財源で公共施設を整備する際の重要な指標となるものです。

「現場の声」を反映したデジタル革新

S.A.F.E.の開発・運用事例は、デジタル化が「上から押し付けられる」ものではなく、実際の現場の課題を理解した当事者により開発されるべきことを示唆しています。

開発者が現役の消防団員であるという事実が、単なる技術導入ではなく、実際に使いやすく、効果的なシステムの開発につながったのです。

地方自治体のデジタル化推進においても、この「当事者主導」の原則は極めて重要です。

震災復興から地域創生へ

須賀川市の「tette」整備は、東日本大震災からの復興事業として始まりました。

しかし、単なる被害からの「回復」ではなく、復興を契機として地域社会を根本的に「再構築」する取り組みとして設計されました。

震災を経験した地域だからこそ、市民の絆を深め、コミュニティを再生させるような施設整備の必要性が認識されたのです。

この視点は、東北各地の自治体において今後の地域づくりを進める上で、極めて貴重な示唆を与えるものです。

行政の横断的体制構築の必要性

「tette」整備を実現するために、須賀川市が「交流センター準備室」を設置し、従来の行政セクション(図書館、公民館、こども課など)の垣根を取り払ったことは、公共施設整備における行政体制の在り方を示唆しています。

複合的な課題解決には、従来の縦割り行政の枠を超えた、横断的な体制構築が不可欠です。

東北地方における応用可能性と政策提言

須賀川市,行政視察

東北各地の地域課題に対する示唆

「tette」と「S.A.F.E.」の事例は、東北地方が直面する共通の課題、すなわち少子高齢化、人口減少、中心市街地衰退に対して、デジタル技術と地域資源の創意的な活用により対応する可能性を示唆しています。

複合交流施設の整備と既存施設の活用

少子高齢化に対応するため、多機能を有する交流施設の整備、あるいは既存の公共施設の複合的な活用を検討する価値があります。

特に学校跡地や老朽化した庁舎については、「tette」の設計手法を参考に、異なる機能を融合させた地域交流拠点への転換を検討する価値があります。

消防団等の地域自治組織のデジタル化推進

消防団、自治会、地域コミュニティ組織の組織的効率性を向上させるため、「S.A.F.E.」のような、当事者主導のデジタルツール開発・導入を支援する施策が必要です。

特に、地域の若い人材がシステムエンジニアリング等の知識を持つ場合、そうした人材が主導的にツール開発に携わる仕組みづくりが重要です。

市民参加型の施設設計プロセス

公共施設整備においては、設計段階での丁寧な市民ワークショップの実施、市民の声を反映させる体制構築が不可欠です。

完成度の高い建築物よりも、市民が「使いたくなる」施設、「継続的に利用される」施設を設計することが重要です。

行政組織の改革と柔軟性

公共施設が複合的な課題解決の拠点として機能するためには、従来の行政セクション間の垣根を取り払い、プロジェクトごとに横断的な体制を構築する柔軟性が必要です。

おわりに

須賀川市役所

須賀川市における「tette」と「S.A.F.E.」の取り組みは、東日本大震災という未曽有の災害を経験した地域が、その困難をどのように乗り越えたかを示す、極めて貴重な事例です。

「tette」は、被害からの「回復」に留まらず、市民の絆を深める「再構築」の拠点として機能し、「S.A.F.E.」は、地域の若い人材による当事者主導のデジタル化を体現しています。

これらの事例から学ぶべき最も重要な点は、「困難な状況にあっても、市民主導で、創意工夫に満ちた解決策を生み出すことができる」という、東北地方が持つ底力です。

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